nicosmic life --- 心理占星術と未完成な日々

私たちは誰でも宇宙のエネルギーを利用することができる
語られていない話に光を当てることは、心に触れる機会となる
先日、TVの取材でお世話になった児童養護施設出身の元プロボクサー、坂本博之氏に電話で呼び出された。
「吉人が怪我からの復帰戦を行うんですよ。試合の前に、仕上がりを見てやってください」という。
「吉人」とは、鹿児島の児童養護施設から坂本さんを頼って上京した愛弟子のプロボクサー。
2010年、デビュー戦直前までの8か月間、私は坂本さんとともに、吉人さんの密着取材をさせてもらっていた。
一緒に児童養護施設にも同行し、坂本さんのライフワークである「ボクシングセッション(今まで一番うれしかったこと、そして一番つらかったこと、特に心にある怒りを拳に込めて子供たちに打たせること)」や、上京したばかりの吉人さんの成長の様子を一緒に見守った。

その後、私もこの仕事が忙しくなり、しばらく彼らの人生から遠ざかっていたが、坂本さんから連絡があり、2年ぶりに再会した。
もう取材の必要はないのだけど、最近の養護施設の状況や虐待児について、いろいろ話を聞かせてもらうことができた。
子供たちの数は減っているのに、養護施設は増えている。
その数の多さに、大人たちが諦めてしまっている。
そんな話だった。

坂本さんは、当時からたくさんの取材を受けていたし、ラジオやTVにも出演し、本も出版し、講演もたくさん行っているので、とても話上手である。
こちらの質問の意図を素早くくみ取り、とても適切に、そして静かに養護施設の子供たちの現状や大人たちの怠慢について語ってくれる。
その話は、いつでも心を打つ。
が、時に物足りなさも感じる。
もっと、語られたことのない話を聴かせてほしい。

私たちは通常、語り慣れた話を人に語る。
男性なら武勇伝のような話をいくつか持っているかもしれない。
ネタのような笑い話、ドジ話を得意とする人もいるだろう。
お涙ちょうだい的な幼少期のエピソード、定番の成長期ネタを披露する人も多い。

現場でも、そうだ。
人は防衛として、繰り返しの、または似たような物語を語り続ける。
変わることを恐れるがあまり、同じ言葉を使い続ける。
例えば、「お金がない話」とか「体調がすぐれない話」とか、「会社に意地悪な人がいる話」とか。

ナラティブセラピーでは、それを「ドミナント・ストーリ(支配的物語)」と呼んでいる。
私たちは多くの場合、「ドミナント・ストーリ(支配的物語)」によって、人生を制約してしまっているかのように、物語の影響に沿った人生を生きてしまうというのだ。
しかし、そこからこぼれ落ちた物語、外側にはじかれた経験という物語は、必ず存在しているという。
それを「オルタナティブ・ストーリー(代替物語)」と呼ぶ。
これまで語られなかった話、言葉を使うことによって、「支配的物語」を破壊し、新しい自己像を手にすることができるようになるというのだ。

河合隼雄氏も「語り」について、こんなことを書いている。

お好みの物語に縛られていないかについては、よく反省する必要がある。
「語る」が極端になると「歌う」になる。
「歌いあげる」ようになると、危険であることは言うまでもない。
物語の危険性を感じさせるのは、どうしても早い解決を期待するあまり、知的につくりあげる物語に影響されることである。
知的な「つくり話」であるかどうかは、その物語をつくるときに感じるイメージの自律性と、それにともなう感動の深さによって知ることができる。
クライアントが「つくり話」に動かされそうになるときに、セラピストはそこで立ち止まることができなくてはならない。

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型にはまった物語、流れに沿った物語ではなく、無骨だけれどみずみずしい、生まれたての物語。
そのような物語に触れることができたら、それは語る人、聴く人、双方にとって、何と素晴らしい体験なることだろう。
ナラティブセラピーを発展させたマイケル・ホワイトは、「効果的なセラピーは、人間の可能性についての好奇心を喚起し、イマジネーションの戯れを引き出すような方法で、感動せずにはいられない人生の苦境の再著述に人々を従事させるものだ」と言っている。

この日、私の「養護施設の子供たちの可能性とはどのようなものか」という質問に対し、坂本さんが私に語ってくれたこと。

いつの時代も子供たちは変わらない。
変わるのは、社会であり、大人であり、子供たちが変わるということは決してない。
だから、大人が変わるしか社会を変える方法はない。

吉人さんはたくましく成長していて、そして仕上がりも万全だったが、試合は惜しくもドロー。
坂本さんは、「結果も大事だけど、プロセスも大事」と言っていた。
そう信じてくれる人がいれば、この先も大丈夫だろうと思う。

坂本さん

人の語る物語は、誰のものでも、どのようなものでも強力な魅力がある。
しかし、物語は語られるものではなく、生きてゆくこと自体が物語、生きることによって物語を創造しているのだ。
だからこそ、生きながら語り、また語りながら生きる、ナラティブが私にとって魅力的に感じるのだろうと思う。

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